【コラム】6月の案件希望者指数は前年同時期から大幅改善、でも喜べない現状

当サイトで案件希望者指数(1日あたりの稼働空き・案件参画希望者数を指数化したもの)を定点観測していたところ、6月月初の数値は28.43と前月比で18パーセント減と悪化した。しかし昨年の同月と比較すると約46パーセントと大幅改善、コロナ禍真っただ中だった昨年からの回復傾向を示している。

昨年7月以降の案件希望者指数

この指数は各月月初、各社に案件参画希望として公開されるフリーランスや派遣会社勤務のエンジニア・コンサル・SEの人数を元に計算したもので、案件に参画したいがフリー(要するに参画できる仕事がない)状態の人の増減を示している。

”人材余りパニック”だった一昨年、昨年のこの時期と比べると、非正規需要は改善が続いている。ただこれはコロナ禍での非正規需要が壊滅的だっただけで、状況が漸くコロナ禍前に戻りつつあるだけと言えるだろう。

フリーランスとは別に、今月解禁された新卒採用では、”特徴の無い人”の苦戦が多くみられる。即戦力になりそうな学部を卒業予定の大学生は内定が出るが、ゼネラリスト指向の学生は内定が取れず、苦戦することが多いようだ。企業が採用にあたって、個人のスペックの中に”採る理由”を探して合否決定している傾向が垣間見える。

非正規はこれまでも尖った人材を中心に需要が回っていたが、新卒にまでこうした採用意向が及ぶのは、やや問題がありそうだ。産業全体で、だれが人材を輩出、育てるのか、すべての企業がおいしいところだけを食べたい…と考えれば、長期的に国力が低下する可能性がある。

駆け出しエンジニアが1人前のエンジニアに脱皮する機会は産業全体にとっては国内人手不足解消の機会にもつながる。ところが岸田政権の政策には投資やスタートアップへの支援は歌われているが、人材の底上げには殆ど言及が無かった。企業の人的投資を倍増させるとの題目だけで、非正規を含めた個人がチャンスを得られる新しいしくみ、目標については言及が無い。

本当にこれだけで若手が育つのだろうか。IT、人材業界からのため息が聞こえるような寒い状況が今年後半にどのような影響を与えるか、注視する必要がありそうだ。