【コラム】8月の案件希望者指数は前年とほぼ同じ、ワクチン普及の影響はみられず

当サイトで案件希望者指数(1日あたりの稼働空き・案件参画希望者数を指数化したもの)を定点観測していたところ、8月月初の数値は34.57と先月から改善した。ただ前年のこの時期とほぼ同じくらいの数値となり、ワクチン普及が非正規需要の改善には直結していない状況を表している。

今年1月以降の案件希望者指数

この指数は各月月初、各社に案件参画希望として公開されるフリーランスや派遣会社勤務のエンジニア・コンサル・SEの人数を元に計算したもので、案件に参画したいがフリー(要するに参画できる仕事がない)状態の人の増減を示している。

昨年8月の数値は35.67で、今年と同様に前月から改善している。これは人材にもいわゆる夏枯れが発生していて、(コロナ禍とは関係なく)非正規の流動化が一時的に停滞する傾向があるためと思われる。
定常的に募集をしている非正規の人も、8月の夏休み以降に案件を募集する人が一部にあり、(例年の傾向として)人材供給が一時的に小さくなった結果とできそうだ。

昨年と今年の違いといえば、既に成人の半分以上がワクチンの1回目を接種していることで、その意味では常駐案件を含む対面稼働条件の良化が見込まれる。しかし現実は依然厳しく、ワクチン普及は非正規の需要に影響を与えていない。需要回復シナリオは描けていない状態だ。

ワーストケースとしては、こういった非正規余りが常態化し、ワクチン接種が進んでも、当面回復が見られない可能性がある。人々が健康を取り戻したとしても、経済の回復は別問題であって、フリーランスや派遣労働者は新しい何かに取り組まないと生活を維持できない可能性もありそうだ。

政府は事業再構築補助金などで事業転換を促しているが、そもそもすべてが成功するわけではない。一度でもやったことがあれば判るが、好況時でも事業転換というものはギャンブル要素があるのだ。今後再構築に失敗した人、長期的に困窮している人はどう生きていけばよいのか、だれからも提示されない状況が続く現在、来月以降の選挙対策として政権がどのような施策を打ち出すか、注視が必要となっている。