【コラム】9月の案件希望者指数は前月から悪化、労働報酬が安いとニッポンはどうなる?

当サイトで案件希望者指数(1日あたりの稼働空き・案件参画希望者数を指数化したもの)を定点観測していたところ、9月月初の数値は40.43と前月比で27パーセント大きく悪化した。しかし昨年の同月と比較すると約31パーセントと大幅に改善、コロナの影響が強く残っていた昨年秋に比べると契約更改期としては静かな動きを見せている。

今年1月以降の案件希望者指数

この指数は各月月初、各社に案件参画希望として公開されるフリーランスや派遣会社勤務のエンジニア・コンサル・SEの人数を元に計算したもので、案件に参画したいがフリー(要するに参画できる仕事がない)状態の人の増減を示している。

今年度も上半期が終わろうとしており、エンジニアの入れ替えもゆっくりではあるが動きが出ている。今月から年末にかけては、例年人、案件どちらも動きが大きくなり、現場を変わるフリーランスも多い。指数は先月より大きくなったが、年末にかけて吸収される人員も多く、案件の存在については心配をする必要はないだろう。

ただし単価については懸念がある。戦争の影響、インフレにより物価がバブル崩壊後で最も上昇している一方、案件単価は変化が起きていない。一部コンサル・PM案件で高めのものが散見されているが、エンジニアの案件は未だに50万円前後のものが出回っている。インフレを考慮すると総支給というよりは手取り給与の金額としてもよいレベルになりつつある。

一般的にフリーランスの単価は派遣エンジニアの利用費用をそのままスライドさせたものが多く、利用者側(企業側)から見ると同じ目線で見られる事が多い。つまり派遣の単価も現状はそれほど上がっていないとできる。こうした物価上昇に労働対価が追いついていないのは、外的要因を身銭で埋めて凌ぐ、というここ数十年の労働条件のあり方が原因と思われる。物価が下がると給料をさげて値下げ追従対応、物価が上がっても給料を下げて相殺対応する習慣が、雇われる側に定着しているとできそうだ。

欧米であれば大規模なデモが発生するなど、労働者が変化対応を率先することはほぼ無い。岸田政権がやっていた賃上げキャンペーンもいつの間にか立ち消えてしまった。同調圧力なのか、絶望の表現なのか、日本人の給料が永久に上がらず、雇用者が安い労働力だけを使う現実が、労働者を社会や幸福から”分断”していることに政府は気づく必要があるだろう。